top of page

著作者って誰?③(著作者人格権)

更新日:2023年8月2日

この話の登場人物


  T弁護士

来人(らいと)君

かつてN弁護士の個人情報保護法のクラスで講義を受け、

近頃、マーケティングや広告のコンサル事業を起業。 





T先生、今日は著作者人格権について教えてもらう約束でしたよね。







ふぁ~。・・・ああ、らいと君。





これは・・・前回と同じ流れ・・・。

また遅くまでゲームですか?





違います。スポーツ法務の研究です。






(今度はサッカーW杯を観ていたんだな。)






突然ですが、著作者が持っている権利は大きく2つに分けられます。







というと?







1つは財産権、もう1つが今回取り扱う人格権です。






そもそも、なぜ著作権だけに人格権が認められるんですか?特許を発明した人には人格権はないですよね?






著作物を生み出した人の名誉や作品への思い入れを、権利として保護するためです。クリエイターの方々の中には、自分の作品を我が子のように大事にしている人もいます。著作権法が目指す文化の発展のためには、そのような作品への心情を保護することが必要なのです。




なるほど。著作権に特有の考え方なのですね。







実は、特許の発明者にも、特許証に発明者として記載される権利が認められており、発明者名誉権と言われることもあります(特許法26条、パリ条約4条の3)。





なんと。初耳でした。






時間の都合上、今回は詳しく説明しませんが。






確か、著作者人格権は「一身専属」なんですよね?著作者が死亡すると、権利が失われるということで良いですか?






必ずしもそうとはいいきれず、一定範囲で著作者の死後も人格権が保護されます。





というと?死後の怨念を保護するのですか?






そんな呪いのビデオみたいな話ではありません。






幽霊じゃなければ、死後の人格権の侵害に対して誰がクレームを言えるのだろう。





著作権法60条では、「著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなった後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない」と定めており、著作者人格権の侵害になるような行為に対しては、遺族による差止請求ができる場合があります。





なるほど遺族か。死後の人格権が保護される期間の制限はないんですか?






ありません。「未来永劫」と言われることもあります。






「未来永劫」!?それ、ほんとですか?





本当ですよ。





今回も寝ぼけているんじゃありませんか?






失礼な!「未来永劫」と言っているのは私じゃなくて、著作権分野のもっと偉い人達ですよ。





ひええ。それじゃあ、インドネシアで発見された「世界最古のイノシシの壁画」(約4万5500年前)とかでも、ずっと人格権で保護されているんですか!? 遺族といっても何万人もの子孫がいますよ!




あまりに現実離れした状況にならないよう、著作権法60条には、「ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない」という但書きがあります。この但書きによって、著作者の死後、相当の時間が経った場合には、ある程度の行為が許されると考えられています。





何だかボヤっとした基準で落ち着かないなあ。






あまり事例はありませんが、ケースバイケースの判断となります。とりあえず、少なくともわが国では、著作者人格権はかなり強力に保護されていると覚えておいてください。





肝心の著作者人格権の内容は、何でしたっけ?





下記の3つが特に重要な権利ですね。




権 利

内 容

条 文

​公表権

無断で著作物そのものを公表されない権利

著作権法18条

氏名表示権

著作物を公表する際に著作者名の表記を決定して表示する権利

同法19条

同一性保持権

無断で著作物を改変されて誤解を受けない権利

同法20条




ニュースで聞いたことありますね。Twitterとかでも問題になっていたような・・・。






リツイートに関する事件ですね。本記事の読者の皆様におかれましては、当該事件について詳しくはこちらの記事をご参照ください。






ちょっと、突然の自分の記事の宣伝をしないでください!






自分の記事ではありません。「T弁護士」とはあくまでフィクションの存在であり・・・。





ややこしいことを言うのはやめて、解説に戻りましょう。






公表権とは、自分が作った著作物を公表するかどうか、いつ公表するかを決定することができるという権利です。例えば、らいと君、あなたが密かに書いている日記を他人に勝手に公表されると困りますよね?





いいえ。当社としては、開かれた社風がモットーなので、個人のブログやSNSも必ず全体公開にしています。






ああそうですか・・。次に、氏名表示権は、著作物の公表に際し、著作者の名前を表示するのかどうか、また実名にするのか変名(ペンネーム等)にするのかを決定する権利です。例えば、らいと君、あなたが開発したソフトウェアが、製作者不明のままに世の中に広まっていくのはイヤですよね?



いいえ全く。私の開発したソフトが世の中に貢献できるのであれば、私自身の名声などどうでも良いのです。将来は「歩くパブリックドメイン」と呼ばれることを目指しています。






「歩くパブリックドメイン」も名声なのでは・・・。






いわれてみれば・・・。





最後の、同一性保持権とは、著作物のタイトルや内容を、著作者の意に反して変更されることを禁止できる権利です。らいと君、ピッチコンテストで披露した名スピーチがあったとして、勝手に他人に変更されて茶化されるのはイヤですよね?





いいえ。全く構いません。スティーブ・ジョブズらの著名な起業家も通ってきた道です。新しいビジネスが人々から理解されるには時間がかかるものなんです。






スティーブ・ジョブズ、あの名言ですか。「アイムハングリー」みたいな。





いやいや、それじゃタダの空腹じゃないですか。”Stay hungry, stay foolish.” ですよ。スタンフォード大学の卒業スピーチで、70年代に廃刊した”Whole Earth Catalog”という雑誌の最後のメッセージを引用したんです。





へえ、そうだったのか。






あんまり興味なさそう・・・。






とにかく、らいと君には著作者人格権は必要ないみたいですね。






オープンな性格ですからね。






上記3つの権利のほかにも、名誉声望保持権(著作権法113条11項)という権利もあります。著作者の名誉や声望を害する方法で著作物を利用することは、著作者人格権の侵害とみなされます。






著作物を批判したりしてはいけないんですか?






それは違います。著作物を批判することは表現の自由で保護されていますし、批評や批判のために著作物を参照することは、適法な引用(著作権32条)として行うことができる場合があります。






具体的にはどんな利用行為が名誉や声望を害するのだろう?





よく挙げられる例としては、著作権の保護期間が切れた芸術作品としての裸体画を複製して、ヌード劇場の立て看板として利用する行為ですね。たとえ著作権の保護期間が切れていても、人格権侵害により遺族による差止めの請求が認められる余地があると思います。





たしかにそれは罰当たりですね。






今日は説明の時間がありませんが、世界各国で人格権の保護の内容は異なっています。アメリカだと、視覚的美術著作物を破壊されない権利が認められていたりします。建物の所有者が、勝手に落書きを消したことで、人格権侵害の責任を問われた例もあるんですよ。



いやいや、落書きは消すでしょう。






でも、バンクシーみたいな例もありますからね。






とにかく著作者人格権の大切さはよく分かりました。





では本日はここまで!





(2022年12月23日公開)


コメント


bottom of page