知的財産とは?①
- namura-law
- 2022年10月23日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年7月31日
この話の登場人物
N弁護士

商子(しょうこ)さん
製造会社に新入社員として入社し、知的財産部に配属された。
大学時代にともにバンドを組んでいたT弁護士の後輩。

初めまして。「しょうこ」さんとお読みするのかしら?

N先生、初めまして。はいそうです。よろしくお願いします。

P社の知財部に入られたんですってね。T先生の大学の後輩とか。T先生、今裁判所の期日のために出かけているから、彼が帰ってくるまでおしゃべりしていましょうか?

先生、わたしとおしゃべりなんてされていていいんですか?

私は今日は、裁判期日もないし、難しい契約書チェックの締め切りももう少し先なんで、大丈夫ですよ。時々は大学で教えているから、若い方とお話しして、皆さんが何に興味があるのか、聞きたいところ。

この新人研修が終わったら、知財部に配属されるのですが、知財って何っ?てレベルなので、先生から教えていただければ嬉しいです。

いきなり難しい質問ね。人間の知的活動により生み出されたアイディアや創作物といった直接的には、目に見えないものに権利が与えられていて、それを総称して知的財産権っていうんですよ。
ちょうど本にまとめているで、表を見てもらいましょうか?
1.知的財産権とは?
【知的財産権の種類及び保護方法】
知的財産権の種類 | 特許権 | 実用新案権 | 意匠権 | 商標権 | 著作権 | 営業秘密 | 商品等表示その他 |
保護の対象 | 発明(物,方法の発明) | 考案(日用品の改良や工夫) | 意匠(物品のデザイン) | 商標(ブランド名,商品名) | 著作物(音楽,映画,絵画,小説等の作品) | 営業秘密(秘密として管理されている有用な技術・営業上の情報) | 需要者の間に広く認識された商品等表示その他不正競争防止法により保護される情報 |
保護を定める法律 | 特許法 | 実用新案法 | 意匠法 | 商標法 | 著作権法 | 不正競争防止法 | 不正競争防止法 |
所轄官庁 | 特許庁 | 特許庁 | 特許庁 | 特許庁 | 文化庁 | 経済産業省 | 経済産業省 |
登録の要否 | 必要 | 必要 | 必要 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
保護期間(原則) | 出願日から20年 | 出願日から10年 | 登録日から20年 | 登録日から10年 | 著作者の死後70年 | 法令上,期間の定めなし | 法令上,期間の定めなし |

この表にはないけれど、種苗法という法律もあって、新品種の植物の「育成者権」というのもあります。おいしいブドウのシャインマスカットが、他国でも勝手に売られているって聞いたことないですか?

あります!そんな権利もあるんですね。

わたしはこれでもロザリアンなのよ。お花や野菜の権利保護もこれからの気候変動や、戦争等で農作物が輸入できないことなども考えると、育成者権の保護はとても重要になっていくと思っています。
2.知的財産と不正競争

さて、この表の特許から著作権と植物の育成者権までは「権」って名前がついていて、物の所有権などと同じように、それを持っている人の権利で、その人だけが使うことのできる難しい言葉では「排他的独占権」といわれるものなのですよ。
右の2つ、営業秘密と商品等表示というのは、それを持っている人の権利とはされていなくて、このようなものを不正に使った場合に、それが不正競争行為とされています。

う~ん、難しいです。右の2つの場合は、では不正競争って、どんなことを指していうんですか?

いきなり講義みたいになっちゃったわね。ごめんなさい。よく知られている商品表示、たとえば、有名になった商品のパッケージなどがよく話題に上ります。少し昔のはなしだけど、「とろけるカレー」っていうカレールーのパッケージが「こくまろカレー」のルーのパッケージに酷似しているとして、そのパッケージの使用差し止めを求めて、「こくまろカレー」を販売している会社が裁判を起こしたことがありました。

「catergory 5」2008年12月1日付記事
http://yokote01.way-nifty.com/category5/2008/12/post-13a5.htmlから画像引用
最終的には和解で終わったけれど。このように有名になった(周知)商品の表示を持っている人は、それに類似する商品表示を使っている人に対して、「差止め」を求めたり、それで損害を被った場合には、損害賠償請求ができ、このようなことができるという意味では、ほかの知的財産権と大きくかわりはないんですよ。営業秘密も同じ。じゃあ何が違うと思う?

なんかテストみたいになってきました~~。

そう、私は授業中も質問魔なの。みんな戦々恐々よ!

えっと、特許とかは、なんか国で認めてくれる権利って聞いたことがあります。だから、権利を持っている人はそれを示せばいいんじゃないですか?でも有名なパッケージかどうか、営業秘密かどうかって裁判所にわかってもらうのって、どうやって証明するのかな?方法、わかりませんが、それが違いですか?

さすが、T先生の後輩ね。そのとおり、証明方法は、ちょっと難しいので、またT先生からお話聞いてもらうとして、知的財産権として、登録が認められているものの場合は、権利者は、権利の登録証などを示せばいいだけなのに対して、営業秘密や、周知表示の場合には、まず、それに該当するところから裁判所に理解してもらう必要があり、かなりハードルが高いんですよ。いい答えがでたところで少し、おやつタイムにしましょうか。
(2022年10月24日公開)
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