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著作者って誰?①

更新日:2023年7月31日

この話の登場人物


  T弁護士

ree

来人(らいと)君

かつてN弁護士の個人情報保護法のクラスで講義を受け、

近頃、マーケティングや広告のコンサル事業を起業。

 

ree

T先生、はじめまして。らいと と申します。





ree


はじめまして、らいと君。今日は、著作権に関する相談があると聞いています。



ree



はい。T先生が著作権のことなら何でも「タダ」で教えてくれるという 噂を聞きました。



ree


誰がそんな噂を・・・。何でも「タダ」ではありませんが、今回はN弁護士の元教え子ということで、らいと君の相談に乗りましょう。




ree



僕が立ち上げた事業にあたり、著作権に関して質問があります。




ree


たしか、マーケティングの事業を立ち上げたんでしたっけ? 




ree



そうなんです!



ree



せっかくなので、事業の内容を簡単にご紹介してもらえますか?





ree

喜んで!まず、T先生もよくご存知のとおり、今後はウェブ3.0といわれるブロックチェーンを用いた分散型のインターネットが主流となっていきます。

従来の巨大Tech企業に集中していたテクノロジーと管理権限を・・・(中略)・・・・わけなんです!そこで、当社は、ユーザーも参加できるマーケティングとして・・・(中略)・・・今から申し上げる7つの理念に従って事業を進めていきます。まず1つ目は、・・・・(中略)・・・・(中略)・・・・。次に2つ目として、・・・・(中略)・・・・(中略)・・・・。


ree



(うっ、長い・・・)




ree



・・・・(中略)・・・・(中略)・・・・。今申し上げた7つの理念を体現するものとして、当社としては今から申し上げる9つの成長戦略と15個の達成目標を・・・。






ree


あの、らいと君、御社の事業については別の機会にゆっくり聞かせてもらうので、そろそろ相談内容に入りましょうか。




ree


さすがT先生、1を聞いて10を知ったわけですね。





ree



そうですそうです。で、ご質問はなんですか?




ree


今後の事業にあたり、企業ロゴやフライヤーのデザイン制作を進めていく予定です。アルバイト社員を使うことや、外部業者への委託も検討しています。社員や外部業者に制作をお願いした場合、誰がデザインの著作権を持つことになるんでしょうか?



ree


まず原則として、著作物に関する権利は、当該著作物を創作した著作者が持つことになります。




ree


じゃあ、共同で作業をした場合にはどうなるんですか?今の構想では、僕がアイディアを出して、美大のデザイン科にいる友人へ具体的なデザインの制作作業をお願いしようかな、と考えていました。僕がデザインの著作者ってことで大丈夫ですか?



ree


大丈夫じゃありませんね。アイディアを出したり、アドバイスをしたりするだけでは、著作者にはなれないと理解してもらって良いです。


ree


なんと。



ree


著作権で保護されるのは「具体的な表現」であり、その背景にあるアイディアではありません。そのため、「具体的な表現」をした人が著作者になります。今のお話を前提にすると、デザイン科のご友人が著作者ですね。


ree


マジかぁ・・・。ロゴのデザインの著作権は譲れないって思ってるんです。そうすると、僕が一からデザインを勉強しなきゃダメってことですね・・・。



ree


いえいえ、そこまで遠回りしなくても大丈夫ですよ。著作者が持っている著作権は、契約によって移転することができるんです。




ree



そうか。例えば僕が著作権を譲り受けるなら、著作者との契約で、「著作権は全部らいとへ譲渡する」って定めておけばいいんですね。




ree


本当に全部譲渡しようと思えば、「著作権は全部らいとへ譲渡する(著作権法27条と28条に定める権利を含む)」と書く必要があります。


ree



27条と28条?




ree


翻案権等(27条)と二次的著作物の利用に関する権利(28条)。詳しくは「著作権って何③」(支分権)を読んでください。





ree


どうして27条と28条は、わざわざ別に書いておく必要があるんですか?




ree


著作権を譲渡する人の保護のためです。著作権は譲渡したけど、作品を勝手に変えられることまでは承諾してなかった、ってケースもあるので。



ree


ややこしいなあ。




ree


27条や28条の各権利の特掲の必要性についてやや議論があるところですが、とにかく27条と28条は別に書いておく必要があるってことは忘れると大変です。気合で覚えてください。気合です。




ree


突然の根性論・・・。





ree


著作権の譲渡にあたっては、著作者が持っている著作者人格権についても手当が必要です。



ree



「著作者人格権も全部らいとへ譲渡する」って書けばいいんですね。


ree


いいえ。著作者人格権は一身専属的な権利なので、他人に譲渡できません。さて、契約でどう規定すれば良いでしょうか?




ree


なんだろう?ああ、「あなたには人格は認めません」って書くのですね?




ree



らいとくん、あなた著作権より先に、人間としてもっと大事なことを学ぶ必要があるのでは・・。


ree



・・・ショック。




ree



ともかく、著作者人格権については、「著作者は著作者人格権を行使しません」という規定を置くことが多いです。



ree



なるほど。なんだか著作者にとって気の毒にも思えますね。





ree


もちろん契約なので、譲渡の対価の金額で調整することもできますし、著作者人格権の不行使とは違う規定にすることもできます。例えば、高名な小説の作家さんとの契約では、「著作者の著作者人格権を尊重する」という規定も見かけます。



ree



パワーバランスによるのですね。




ree



著作者の方とよく話し合って、共通認識をもっておくことが重要ですね。




ree


ところで、企業ロゴのデザインは専門家にお任せしようと思うんですが、名刺やフライヤーについては僕も一緒にデザインを考えたいんです。複数人で一緒にデザインの表現を作ったときはどうなるのですか?


ree



その場合は、「共同著作物」になります。複数の著作者で著作権を共有することになります。



ree



そんなこともできるんですね。




ree

しかし、著作権を共有していると、全員の合意がなければ権利行使ができないなど、不便な点があるんですよ。一緒にデザインする場合も、やはり相手方から著作権の譲渡を受けておくということを検討してください。



ree



覚えておきます。



ree

また、らいと君の事業にあたり、従業員に指示してデザイン制作してもらったような場合には、実際にデザインを制作した従業員ではなく、雇い主であるらいと君や会社が著作権を取得することがあります。これを「職務著作」といいます。


ree



それ良いですね。早く教えてください。




ree


職務著作にあたるには色々と要件がありますので、次回にご説明します。




ree


次回もお願いします!




(2022年12月7日公開)

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